椎名誠のユニークな紀行エッセイは笑えます

椎名誠のユニークな紀行エッセイは笑えます

椎名誠は大好きな作家のひとりです。シュールで不思議な毒のある小説もいいし、エッセイもまた楽しめます。そんな椎名誠の本で最近読んだのが「ニッポンあらまあ お祭り紀行」。講談社文庫版です。
新刊ではなく、発行は5年前。本屋で何度か見かけるたびに気になっていたものの、テーマ自体にあまり興味がなかったので、これまでスルーしてきました。けれど、先日また本屋で目にして、手に取ってページを開いてみたら、写真が豊富でそのキャプションだけでもじゅうぶんおもしろかったので、買うことにしたのです。
キャプションだけがおもしろい、ということはもちろんなく、いつもの「シーナ調」のエッセイよりももっと軽く明るいたタッチで、なんども声を出して笑ってしまいました。
日本全国の「ありゃまあ」とあきれたり感心したりする、変わった祭りのルポルタージュです。私が買って読んだのは「春夏編」で12の祭りが紹介されています。
たとえば滋賀県の「ケンケト祭り」。紙で作った鷺の大きな幟がメインで、この幟に飾られている紙帯を切れ端を、参加者たちが奪い合うというもの。かなり激しい争奪戦らしく、乱闘が起こることもあるといいます。ところが決死の思いで奪い取ったその紙帯の「ご利益」はというと、なんと「タンスの虫除け」。
それだけのために乱闘までする、と知って椎名誠は「ありゃま!」。ただし、すべてが「ありゃま」というわけではなく、この祭りは子供たちの衣装が大変カラフルで、ほとんど美術品のようです。それも日本的な色合いではなく、ネパールあたりの民族衣装のような派手さ。写真でもじゅうぶんにその美しさがわかります。
その町の川の景色がまたすばらしく、これぞ日本の里山といった印象です。それだけに、原色の衣装との対比がいっそう際立つのです。
読めば、その祭りを見に行きたくなることうけあいの、傑作紀行でした。